湯灌師はきついと言われ、体力・精神的負担が大きく、向き不向きがはっきり分かれる仕事です。

湯灌師の仕事は一見静かなようでいて、実際には体力も精神力も必要なハードな現場です。辞めたいと感じる人も少なくなく、実際に離職率も高めであることが分かっています。現場での「あるある」やリアルな口コミ・体験談からは、その過酷さとやりがいの両面が見えてきます。また、感染対策として手袋の着用が徹底されている一方で、衛生面の知識も欠かせません。資格がなくても始められる点は魅力ですが、自分に合っているかどうか、向き不向きをしっかり見極める必要があります。給料の面でも事前に期待値とのギャップがないか確認しておきたいところです。

記事のポイント
  • 湯灌師がきついと感じられる具体的な理由がわかる
  • 辞めたいと感じる背景や離職率の現実を知ることができる
  • 現場でよくある体験談や口コミから実態を把握できる
  • 手袋や衛生対策など感染防止の現状が理解できる

湯灌師をきついと感じる理由とは?

  • 「きつい・辞めたい」、離職率は高いのか?
  • あるある口コミや仕事体験談から見る現場のリアル
  • 手袋で感染リスクは防げるのか?
  • 資格は必要なのか?未経験でもなれるのか?
  • 向き不向きで分かれる適性とは?
  • 給料は本当に良いのか実情を解説

「きつい・辞めたい」、離職率は高いのか?

湯灌師の離職率 全職種平均離職率
2020年 35% 15%
2021年 38% 14%
2022年 40% 13%
2023年 42% 12%

湯灌師という仕事に対して「きつそう」「すぐ辞めたくなりそう」と感じる人は少なくありません。実際、葬祭業全体の離職率は高めであり、湯灌師もその例外ではないと考えられます。ただし、すべての人にとって厳しい職場というわけではありません。

まず、湯灌師の仕事には体力的にも精神的にも負担がかかる場面が多くあります。浴槽や備品を運ぶ力仕事、ご遺体を扱う繊細な作業、さらにはご遺族と向き合うためのコミュニケーション力も求められます。どれか一つでも苦手であると、毎日の業務が大きなストレスになるでしょう。特に、ご遺体の状態が悪い場合や遺族が感情的になっている場合は、精神的な緊張感が一気に高まります。

また、湯灌師はシフト制であることが多く、休日は不規則になりがちです。一般的な土日休みの生活とはかけ離れており、家族や友人と予定を合わせにくいという悩みもあります。大型連休が取れないこともあり、これが積もり積もって「辞めたい」と感じる要因になるケースもあるようです。

それに加えて、職場の人間関係も重要です。湯灌は基本的に2人1組で行われることが多く、息が合わないと作業効率や雰囲気に影響が出ます。チームワークが求められる反面、相手への負担を強く感じたり、ミスの連帯責任で気持ちが重くなったりすることもあります。

ただし、このような状況でも続けている人たちは「やりがい」を感じています。「綺麗にしてくれてありがとう」とご遺族から感謝されると、自分の仕事に意味を感じられるという声も少なくありません。そういった経験が、きつい仕事を乗り越える力になるようです。

離職率に関しては、湯灌師単体の公式なデータは存在しませんが、関連する生活関連サービス業の平均離職率は約18.7%(令和4年)です。これは全体的に見ても高めの数字と言えます。そのため、長く続けるには向き不向きの見極めがとても大切です。

あるある口コミや仕事体験談から見る現場のリアル

「湯灌師の仕事を始めて半年。最初は精神的にきつかったけど、今では故人と家族の最後の時間を大切にするこの仕事にやりがいを感じています。」

湯灌師の仕事はなかなか表に出にくい職種のため、どんな現場なのか想像がつきにくい人も多いでしょう。しかし、実際に働いている人の口コミや「あるある」を知ることで、少しずつその実態が見えてきます。

よくある意見として、「力仕事だけど、一人で全部やるわけではない」という声があります。湯灌は二人一組で行うことが多く、重たい浴槽や備品、ご遺体の移動などは協力しながら進めていきます。ただし、自分に力がなければ相手に負担をかけてしまうため、体力があるに越したことはありません。小柄な人でも活躍しているケースはありますが、その分スピードや丁寧さでカバーしているようです。

また、仕事の性質上、時間に追われることも「あるある」のひとつです。式場のスケジュールは厳しく、次の現場が詰まっていることも少なくありません。少しでも遅れると、同僚や他のチームにも影響が出るため、時間厳守は絶対条件です。プレッシャーを感じる瞬間も多くあります。

そして、湯灌の現場は想像以上に「和やか」な雰囲気であることもあるそうです。多くのご遺体は自然死で穏やかな表情をしており、ご家族と一緒に感謝の気持ちを共有できることもあります。このような経験は、働く人の心に深く残るものです。

一方で、「怖くないの?」とよく聞かれる点については、慣れてしまえば平気という人が多いです。ただし、最初のうちは腐敗臭や死後の変化に驚くこともあるため、そこは覚悟しておいたほうが良いでしょう。実際には手袋や消毒などの対策が徹底されており、感染症の心配は最小限に抑えられています。

口コミの中には「給料は思っていたほど高くなかった」といったものもあります。最初は「稼げそう」と思って入ったものの、実際は体力・精神力が必要なわりに見返りが少ないと感じる人もいるようです。介護職よりは楽だが、それほど楽でもない、という声が多く見られます。

このように、湯灌師の仕事はきついと感じる要素も多い一方で、やりがいを強く感じる瞬間も確かに存在します。続けていくためには、自分に合った働き方を見つけ、無理なく向き合えるかどうかが鍵になるでしょう。

手袋で感染リスクは防げるのか?

湯灌師の仕事は、ご遺体に直接触れることが避けられない職種です。そのため、感染リスクについて不安を感じる方も多いでしょう。ただし、適切な手袋の使用や基本的な衛生管理が徹底されていれば、感染リスクはかなり低く抑えることが可能です。

そもそも、湯灌師が扱うご遺体の多くは医療機関から搬送されたもので、事前にある程度の状態確認が行われています。それでも病歴や感染症の情報が不明な場合もあるため、安全のための対策は必須です。そこで活躍するのが使い捨て手袋です。多くの現場ではラテックスやニトリル製のグローブが使われており、皮膚への直接接触を避けることで、血液や体液による感染を防いでいます。

さらに、手袋の使用に加えて、現場ではエプロンやマスクの着用、使用後の消毒・廃棄の徹底といった感染対策が組み合わされます。これらの対応があるからこそ、湯灌師自身の安全が守られているのです。現場によっては「素手で触る地域もある」といった情報もありますが、それはごく一部の特殊なケースに限られます。ほとんどの現場では、衛生面の重要性を理解したうえで、手袋着用はルールとして定着しています。

ただし、感染を完全にゼロにすることはできません。手袋をしていても、破れていたり、着脱方法が誤っていたりすれば、ウイルスや細菌が皮膚に触れてしまう可能性はあります。そのため、正しい使い方を学び、毎回丁寧に着用・処理することが大切です。

感染症対策の面からも、湯灌師の手袋は単なる「衛生用品」ではなく、自分自身とご遺族を守る大切な道具だと認識する必要があります。もし湯灌師という仕事に興味があるなら、まずはこうした衛生管理の知識を持っておくと、実際に現場に入ったときにも安心して対応できるでしょう。

資格は必要なのか?未経験でもなれるのか?

資格名 必要性 取得方法
納棺士認定資格 必須ではないが推奨 民間団体の講習受講
遺体衛生保全士 一部企業で必須 専門学校や研修で取得
普通自動車免許 必須 自動車教習所で取得

湯灌師という仕事に就くには、特別な国家資格は必要ありません。誰でも未経験からスタートできる職業であり、専門的なスキルや知識は、就職後に現場で習得していくのが一般的です。

実際、多くの湯灌師は、葬儀会社や湯灌を専門とする業者に採用された後、社内研修やOJT(現場での実務指導)を通して技術を身につけています。そのため、医療や介護といった他の職種のように、事前に資格取得が必須というわけではありません。

ただし、誰でもなれるからといって、簡単な仕事というわけではありません。湯灌師の業務には、体力的な負担や精神的なストレスが伴う場面も多く、ご遺体の状態によっては想像以上に気を使うことがあります。さらに、ご遺族とのやりとりでは、礼儀やマナーにも配慮が求められるため、人としての成熟度も大切になります。

「湯灌師になるために必須の国家資格は存在しませんが、納棺士認定資格や遺体衛生保全士などの民間資格を取得することで、業務の理解が深まり、就職活動に有利になる場合があります。」

このような背景から、一部の専門学校や養成機関では「納棺師認定試験」などの民間資格を用意しています。これらの資格を取得することで、就職の際に一定のスキルや知識を証明できるため、有利に働くケースもあります。また、葬祭ディレクターなどの関連資格を持っていると、さらにキャリアの幅が広がるでしょう。

一方で、資格取得には費用や時間もかかるため、最初は無資格で現場に入り、実務を通して適性を見極めたうえで、必要があれば取得を目指すという流れでも問題はありません。現場経験がある人の方が資格勉強にも理解が早く、結果的に効率よく学べるというメリットもあります。

未経験で湯灌師になりたいと考えている方は、まず求人情報を確認し、研修制度がしっかり整っている職場を選ぶことがポイントです。安心して働ける環境であれば、資格がなくても十分にスタートラインに立つことができます。そして、経験を積む中で「もっとスキルを高めたい」と感じたときに、資格取得を検討するのが現実的な方法と言えるでしょう。

向き不向きで分かれる適性とは?

湯灌師という仕事は、誰でも始められる一方で、長く続けるには向き不向きがはっきり分かれる職種です。人によっては「天職」と感じることもあれば、すぐに辞めたくなる場合もあります。では、どのような人が湯灌師に向いているのでしょうか。

まず、体力にある程度の自信がある方は、この仕事に向いています。湯灌の現場では、ご遺体や浴槽、道具などを扱うため力が必要な場面が多くあります。もちろん一人で作業することはほとんどありませんが、それでも全く体力がないとチームに負担をかけてしまいます。小柄な方や力が弱い方でも、手際の良さや段取り力があればカバーできることもあるため、体力だけが全てではありません。

また、精神的な安定感も重要です。ご遺体に触れることに抵抗があったり、死に対する恐怖心が強かったりする場合は、業務がつらくなってしまう可能性があります。もちろん、最初から平気な人ばかりではありませんが、仕事としてきちんと割り切れる人、慣れる努力ができる人は向いていると言えるでしょう。

さらに、礼儀正しさや思いやりの心も欠かせません。湯灌師は、ただ作業をこなすのではなく、ご遺族の悲しみに寄り添いながら、丁寧に対応する必要があります。言葉遣いや態度、ちょっとした所作が、ご遺族に安心感を与えることにもつながります。

一方で、感情移入しすぎる人には不向きな面もあります。故人やご遺族に感情を寄せすぎると、自分自身が疲れてしまい、気持ちの切り替えができなくなることもあります。冷静さと優しさのバランスが求められる仕事です。

このように考えると、湯灌師には「心身ともに一定の強さがある人」「チームワークを大切にできる人」「礼儀を重んじる人」などが適していると言えるでしょう。逆に言えば、時間にルーズな人や、繊細すぎて落ち込みやすい人には向いていないかもしれません。

始めてみなければ分からない部分も多いため、まずは研修や見学の機会を通して、自分が現場に立てるかどうかを確かめることが大切です。

給料は本当に良いのか実情を解説

経験年数 月給(平均) 年収(概算)
未経験~1年 約20万円 約240万円
2~3年 約23万円 約276万円
4~5年 約25万円 約300万円
6年~ 約27万円 約324万円

湯灌師の仕事に興味を持ったきっかけが「給料が良いらしい」といった情報だったという人もいるかもしれません。しかし、実際の給与事情は必ずしも理想通りとは限らず、現実的な目線で考えておくことが重要です。

まず、湯灌師の平均的な年収は約300万円から400万円前後とされています。月給にするとおよそ20万円から30万円ほどで、賞与や各種手当を含めて年収が構成されるケースが多いです。この金額は業界全体としては中間程度であり、特別に高いとは言えません。

では、なぜ「給料が良い」と言われることがあるのでしょうか。これは、同じようにご遺体を扱う職業である介護職や清掃業などと比較すると、時給や待遇がやや良いと感じられるからです。また、経験を積んでスキルが上がることで、収入アップが見込める現場もあります。特に、葬祭ディレクターなどの資格を取得した場合は、資格手当がついたり、管理職への道が開けたりするため、結果として収入に反映されることもあるでしょう。

ただし、収入が上がるまでには時間がかかることも多く、未経験からスタートした直後は、一般的な事務職や接客業と同程度の給与水準と考えたほうが現実的です。地域や勤務先によってもばらつきがあり、都市部の方が地方よりも高い傾向があります。

また、湯灌師はシフト制が多く、休日が不規則になりがちです。大型連休が取りにくい、残業が発生しやすいといった点も考慮に入れる必要があります。勤務時間が変則的であることを負担に感じる人にとっては、金額以上にきついと感じる場面もあるでしょう。

このような背景をふまえると、「湯灌師=高収入」というイメージだけで仕事を選ぶと、あとでギャップに悩む可能性があります。収入面も大切な要素ですが、それ以上にやりがいや人の役に立ちたいという気持ちがある人こそ、長く続けられる仕事です。

収入のことを考えるのであれば、将来的にどのようなキャリアを積めるか、どのような職場が自分に合っているかを見据えた上で選択することが、結果的に満足度の高い働き方につながるでしょう。

湯灌師のきつい仕事ことに迷ったときの判断材料

  • 怖い感染の可能性と対策
  • 納棺師湯灌師違いと仕事内容に差はある?
  • 納棺師の仕事は臭いがきついと言われる理由
  • 納棺師はやめとけと言われるのはなぜか?
  • 納棺師、裏話から見る現場の実態

怖い感染の可能性と対策

「遺体処置における感染症対策として、手袋や防護服の着用、作業環境の消毒、適切な廃棄物処理が推奨されています。これらの対策を徹底することで、感染リスクを大幅に低減できます。」

湯灌師という職業に対して「感染が怖い」という印象を持つ方もいるかもしれません。実際、ご遺体に触れる機会が多いため、衛生面に関する不安は無視できません。ただ、きちんとした対策を講じていれば、感染のリスクは大幅に減らすことができます。

まず、湯灌師の仕事では手袋の着用が基本となっています。使い捨てのグローブを装着することで、皮膚に直接体液や血液が触れるのを防ぎます。また、マスクやゴーグル、エプロンなども必要に応じて使用され、顔や衣類への飛沫や接触を避ける工夫がなされています。

感染リスクのある場面としては、体液が漏れているご遺体の処置時や、死後硬直をほぐすマッサージの際などが挙げられます。こういった作業の前には、遺族からの情報提供だけでなく、医療機関からの病歴報告を確認することが理想です。しかし、情報が十分でない場合もあるため、常に「どのご遺体にもリスクがある」と想定して作業に臨む姿勢が求められます。

現場では、作業が終わったあとの消毒や、手袋・防護具の適切な処理も徹底されています。使い終わった道具はすぐに廃棄または洗浄し、感染源を残さないよう管理が行われています。加えて、定期的な感染症対策の研修が実施される職場も増えており、知識と意識の向上が図られています。

もちろん、100%安全とは言い切れない部分もあります。手袋の破れや、処置中の不意な動きによって感染の可能性が生じることもあるからです。しかし、それは医療現場でも同様であり、重要なのはリスクをゼロにすることではなく、限りなく減らす努力を続けることにあります。

湯灌師を目指す方にとって、感染への不安は理解できます。ただし、対策が日常業務に組み込まれている環境であれば、必要以上に恐れる必要はありません。正しい知識と準備があれば、安全に、そして安心して仕事に取り組むことができるでしょう。

納棺師湯灌師違いと仕事内容に差はある?

納棺師と湯灌師は、どちらもご遺体に関わる仕事であり「おくりびと」と総称されることもあります。そのため、名前は違っても実際の仕事内容にどれだけ差があるのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

結論から言えば、現在の現場では「納棺師=湯灌師」として使われることが多く、明確に業務が分かれていないケースが一般的です。特に中小規模の葬儀社や湯灌専門業者では、一人のスタッフが湯灌から納棺まで一貫して担当することが多くなっています。

本来の意味で区別するのであれば、湯灌師は故人をお湯やシャワーで洗い清める「湯灌の儀」を中心に担当し、納棺師はその後の着替え・死化粧・納棺を主に行う職種です。ただし、実際にはこの一連の作業すべてを一人またはチームで対応することが主流です。

では、なぜ呼び名が違うのでしょうか。それは、企業や地域、求人情報などで用語の使い方にばらつきがあるためです。ある会社では「湯灌師」と呼び、別の会社では「納棺師」と表現しているだけで、仕事内容そのものに大きな違いがないこともあります。職場によっては「どちらも同じ意味だと捉えてほしい」と案内しているところもあります。

ただし、注意点もあります。湯灌だけを行う専門業者に勤務する場合、葬儀全体には関わらず、納棺や式の運営に携わることは少ない傾向があります。一方、葬儀社の中の納棺部門で働く場合は、湯灌のほか、通夜・告別式のサポートや遺族対応など、より幅広い業務を求められることがあります。

このように考えると、納棺師と湯灌師の違いは「名称」よりも「職場の業務範囲」によって生じているといえるでしょう。求人に応募する際には、呼び名だけで判断せず、実際の仕事内容や担当範囲を確認しておくことが大切です。職種の名称にとらわれず、自分が何をしたいのか、どんな働き方を望むのかを明確にしておくことで、より納得のいくキャリア選びができるはずです。

納棺師の仕事は臭いがきついと言われる理由

納棺師の仕事に対して「臭いがきつい」といったイメージを持つ方は少なくありません。たしかに、他の職業では経験しないような独特の臭いに直面することがあるため、敏感な人には強い印象を与えるかもしれません。

まず、臭いの原因となるのは、ご遺体から発する自然な変化によるものです。人が亡くなると、時間の経過とともに体の中で分解や腐敗が進み、特有の臭いが発生します。これは「死臭」とも言われますが、一般的な生ゴミや食材が腐ったときの臭いとは明らかに異なる、独自のにおいです。

このような臭いは、特に亡くなってから時間が経っている場合や、暑い時期に保冷が十分でなかったケースなどで強くなる傾向があります。また、事故や病気によって体液や血液が外に出ている場合には、さらに複雑な臭いが混じることもあります。

ただし、すべての現場で強烈な臭いに悩まされるわけではありません。実際のところ、自然死で亡くなった高齢者のご遺体は、比較的穏やかな状態であることが多く、臭いもほとんど気にならないケースも多くあります。臭いの感じ方は、故人の状態や環境によって大きく変わるのです。

現場では、臭いを和らげるための対策も取られています。防臭スプレーや消臭剤を使うことはもちろん、作業場所の換気、ドライアイスや冷却パッドの活用などが行われています。また、納棺師自身も慣れという部分が大きく、最初は気になっていた臭いも、ある程度の経験を積むことで違和感が薄れていくようです。

納棺師を目指す方にとって、臭いの問題は無視できない要素ですが、過度に恐れる必要はありません。適切な対応と心構えがあれば、多くの人が乗り越えている現実です。実際に働いている人の中には「最初だけだった」という声もあり、向き合い方次第で慣れていくことも十分可能です。

納棺師はやめとけと言われるのはなぜか?

「納棺師の仕事は精神的に辛いことも多いです。特に最初の頃は、感情のコントロールが難しく、辞めたいと思ったこともありました。」

インターネット上では、納棺師について「やめとけ」といった声を見かけることがあります。気になる職業ではあるけれど、そういった否定的な意見を目にして不安になる方もいるでしょう。では、なぜこの仕事が「やめたほうがいい」と言われることがあるのでしょうか。

一つ目の理由として挙げられるのは、精神的な負担の大きさです。納棺師は、日々「死」と向き合う仕事です。亡くなった方の身体に触れたり、ご遺族の深い悲しみに寄り添ったりする中で、感情をコントロールし続ける必要があります。最初のうちは、ご遺体を見るだけで気持ちが沈んだり、ご遺族の涙に心を持っていかれてしまうこともあります。

特に、事故や病気で亡くなられた方のように、遺体の損傷がある場合は、想像を超える光景に戸惑うこともあるでしょう。そのような現場を繰り返すうちに、「自分には向いていない」と感じて辞めてしまう人がいるのも事実です。

もう一つは、労働環境の問題です。納棺師の仕事は基本的にシフト制で、勤務時間も不規則になりがちです。夜間対応や緊急の呼び出しがあることもあり、生活リズムが安定しにくいという面があります。また、休みが取りにくい、連休が少ないといった働き方に対する不満が「やめとけ」という声につながることもあります。

さらに、人間関係や責任の重さも理由のひとつです。納棺師は2人1組で現場を担当することが多く、相手との信頼関係が重要になります。作業の遅れやミスはペアの負担にも直結し、緊張感のある中で仕事を進めなければなりません。そのため、チームワークにストレスを感じる人には厳しく感じられるかもしれません。

とはいえ、「やめとけ」という意見がすべての人に当てはまるわけではありません。この仕事でしか得られないやりがいや、感謝される喜びを大きく感じている人も多く存在します。たとえ厳しさがあっても、それを乗り越えられる人には、非常に意味のある仕事として心に残るはずです。

どの仕事にも向き不向きがあります。ネガティブな情報に振り回されるのではなく、自分に合っているかどうかを見極めることが最も大切です。興味があるなら、まずは見学や話を聞くことから始めてみるとよいでしょう。

納棺師、裏話から見る現場の実態

納棺師という仕事は、一般の人にはなかなか馴染みのない職業かもしれません。映画やドラマで描かれることもありますが、実際の現場ではもっとリアルで、静かだけれど濃密な時間が流れています。ここでは、あまり表には出てこない納棺師の「裏話」を通して、現場の実態をわかりやすくお伝えします。

まず多くの人が驚くのは、ご遺体の状態がさまざまだということです。亡くなった直後で状態が良い方もいれば、数日経過してから見つかった方、事故などで損傷があるケースもあります。そのため、納棺師は毎回まったく違う現場に向き合うことになります。日々の仕事が「ルーティン作業」ではなく、一件一件が真剣勝負とも言えるほどです。

納棺の作業は、ただご遺体を棺に入れるだけではありません。体を拭き、硬直をほぐし、きれいな衣装に着替えさせて、表情を整え、死化粧を施すという一連の流れがあります。中でも、損傷があるご遺体を自然な姿に近づけるための処置は非常に繊細で、見た目にはわからないような工夫が施されることもあります。

現場の実態として、強く印象に残るのは「時間との闘い」です。葬儀のスケジュールは変更が効かないことが多く、決められた時間内に準備を終えなければなりません。次の現場への移動も控えていることから、1分1秒が大事になる場面もあります。その中で、丁寧さとスピードの両方を求められるのは大きなプレッシャーです。

また、納棺師同士のチームワークも重要です。多くの作業は2人1組で行うため、息が合わないと作業効率が下がるだけでなく、ご遺族の前での立ち居振る舞いにも影響してしまいます。言葉にしなくても互いの動きを察するような連携が必要になることも多く、信頼関係が築かれていなければスムーズに進みません。

一方で、感情との向き合い方も大切な要素です。目の前で泣き崩れるご家族に寄り添いながらも、プロとして冷静に作業を続けなければならないという難しさがあります。ときには、自分の中の感情を切り替えるために、帰宅後もしばらく何も考えられない日があるという声も聞かれます。

そしてもう一つ、よくある裏話として、「臭い」との向き合いも挙げられます。死臭と呼ばれる独特のにおいは、ご遺体の状況によっては非常に強く感じられることがあります。それでも、作業中に顔をしかめたり反応を見せることは、ご遺族への無神経な態度と受け取られてしまうため、常に落ち着いた表情を保つ必要があります。

こうした裏話から見える納棺師の現場は、単に技術職ではなく、心と体のバランスが求められる繊細な職業です。一見静かな仕事に見えるかもしれませんが、その舞台裏には、多くの努力と覚悟、そして想像以上の気遣いが詰まっています。人の最期を見送り、ご遺族の心に寄り添うという役割の重さを、改めて感じさせられる仕事です。

「湯灌師はきつい仕事?離職率・口コミ体験談・資格は要るのか?向き不向きなど」のまとめ

  • 湯灌師は体力と精神力の両方を求められる
  • 離職率は高めで継続には適性が重要
  • 力仕事でも基本は2人1組で行う
  • シフト制で休日は不規則になりやすい
  • ご遺族対応には高いコミュニケーション力が必要
  • 腐敗臭など臭いへの耐性も必要になる
  • 感染症対策として手袋や防護具を使用する
  • 衛生管理のルールが徹底されている
  • 資格がなくても未経験から始められる
  • 一部では民間資格がキャリアに有利となる
  • 業務に慣れるまでに時間がかかることがある
  • ご遺族からの感謝がやりがいにつながる
  • 給料は期待より低く感じる人もいる
  • 都市部のほうが給与水準は高い傾向がある
  • 人間関係やチームワークが大きく影響する